【予習】あいつはウェットなクズ野郎。BBC版オリバー・ツイスト感想
突然ですが、皆さんの推しの予定はどうですか。出ていますか。
ありがたいことに弊推しは10月〜11月上旬、12月上旬に舞台の仕事が入っています。(逆に言えば7〜9月の予定はレギュラーの配信しか今のとこない。解禁はよ)
ミュージカル オリバー!のビル・サイクス役です。
【インタビュー🎤】「一番嫌われたい」spiが語るミュージカル『#オリバー!』✨
— げきぴあ byチケットぴあ (@gekipia) 2021年7月7日
傑作ミュージカル『オリバー!』にて #原慎一郎 とのWキャストでビル・サイクスを演じる #spi に話を聞いた🙌https://t.co/eTbf1aKyU2
上記サイトより引用
物語の舞台はヴィクトリア朝イングランド。
救貧院で食に満たされることのない暮らしを続けていた孤児のオリバーは、下働きに出された葬儀屋でひどい仕打ちを受ける。
逃げ出したオリバーがたどりついたのはロンドンの街。
彼はそこでフェイギンという老人が元締めを務めるコソ泥とスリの集団に取り込まれる。
スリの濡れ衣を着せられ、捕らえられたオリバーは、その被害者である親切な紳士ブラウンロウ氏に引き取られた。
アジトを知られることを恐れたフェイギンは、冷酷なビル・サイクスと心優しいナンシーを使ってオリバーを力ずくで連れ戻そうとたくらむ。
オリバーは本当の家族の愛を見つけることができるのだろうか―。
そういえばオリバー・ツイストって読んだことがないな?と気づき原作を読み始め、映像も見ることにしました。ひとまずBBC版をチョイス。
感想。
えっ推し!この役するの!?すごいクズじゃん!!
ビル・サイクス最低だな!めちゃくちゃ楽しみ!!
期待度爆上がり。というわけで、BBC版のオリバー・ツイストの感想と、ミュージカル「オリバー!」への期待を書きます。
ネタバレあり。あらすじに興味がない人は、目次から感想までスキップしてください。
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相関図と簡単なあらすじ
めちゃくちゃ噛み砕いて言うと、
いろいろ苦労があったけど、孤児の自分を助けてくれたお金持ちの老人がなんと実の祖父だった!
主人公はラッキーだし、関わった悪役は絞首刑になったりしました。めでたしめでたし。
みたいな話です。雑すぎ、かつBBC版はだいぶ設定が違うようなので、以下あらすじ。
嵐の夜、助けを求めたどり着いたマッドフォグ救貧院で出産したアグネスは、今際の際に手紙を遺す。だがその手紙が受取人に届けられることはなかった。
ブラウンロウ家で老紳士の姪・ローズとメイドのベドウィンに介抱されるオリバー。
束の間の安寧。
しかし、なんやかんやあってオリバーはフェイギン一味のナンシーに連れ出され、監禁されてしまう。
同じ頃、フェイギンは謎の男・モンクスに「オリバーを殺せ」と依頼を請けていた。
孤児のオリバーを大金を払って殺したいほど憎む者がいるのなら、同じように大金を払い彼を求める者がいるはず。そう考えたフェイギンは、オリバーをまだ見ぬ「彼ら」に引き渡すことを画策する。
だがオリバーはフェイギンと仕事で関わりのある凶悪な男、ビル・サイクスに拐われ、とある家の盗みに利用される。空き巣に気づいた主人は発砲。オリバーは重傷を負う。
フェイギンの家に運び込まれたオリバーは、医者の診察とナンシーの献身的な看病で一命を取り留める。
左から2番目がビル・サイクス。右端がナンシー
ブラウンロウ家。
ローズとベドウィンは突然いなくなったオリバーを探すが、それを知ったブラウンロウは「あいつは盗人だ」と二人を咎め、どこで誰とあったかを述べるように要求する。
私を監視しても姉のアグネスは戻らないというローズの言葉に
「私はなんとしてでも、アグネスと彼女の子供を家に連れ戻す」
とブラウンロウは反駁。オリバーは今危険な目に遭っていると激昂し飛び出すローズに対し、自分が落ち着かせると伝えたのは、先日久しぶりに家に訪ねてきたブラウンロウの孫エドワード(=モンクス)だった。
エドワード(モンクス)は自分と同じ父を持つ異母兄弟のオリバーを殺し遺産を独占、ローズを妻にするため、秘密裏に動いていたのである。※なお、この時点でオリバーがブラウンロウの孫だと知っているのはエドワードのみ
オリバー殺害計画を知り彼の身を案じたナンシーは、ブラウンロウとローズに接触。オリバーを助けて欲しいと懇願する。そこで発覚するエドワード(モンクス)の行動。
フェイギンがやらなければモンクスがオリバーを殺してしまう。フェイギンのところへ行ってくれ、自分は危険な人を引き止めておくからと告げるナンシーだが、ブラウンロウは嘘だ、エドワードがそんなことをする訳がないと一蹴する。
しかし懸命なローズの説得により、フェイギンの住処に警察を派遣。オリバーが本当にその場にいたこと、ビル・サイクスにより連れ出されたこと、エドワードがオリバーを殺したがっていることを知る。
捕らえられ投獄されるフェイギン。
フェイギンから独立し、新たなグループを作る子どもたち。
ビル・サイクスに捕らえられたオリバーは彼の支配から逃れ、自分に親切にしてくれたブラウンロウ家に向かい、無事に保護される。
フェイギンは公開処刑の絞首刑に。
ビル・サイクスは気が触れてしまい、下水道で首吊り自殺を。
そしてドッジはビルの飼い犬に出会い、第二のビル・サイクスとして生きていく。
物語におけるオリバーの軌跡
救貧院でまともな食事を得ることもできず暮らす
→売り飛ばされる
→買主の葬儀屋から逃げ出す
→フェイギンがボスを務める一味に引き込まれる
→ドッジのスリ現場で逃げそびれ捕らえられる
→裁判にかけられるも、スリの被害者のブラウンロウ氏に引き取られ世話をされる
→窃盗団一味に騙され捕まえられて監禁される
→ビル・サイクスに空き巣を強要され、家の主人に発砲される
→フェイギンの住処に連れて行かれるが、ビルに拐われる
→隙をついて脱走。ブラウンロウ宅に引き取られる
ウルトララッキーボーイですね。
BBC版オリバーツイストの感想
タイトルこそ「オリバー・ツイスト」ですが、これは周りの大人たちを描いている物語だとわたしは感じました。
小説から削ぎ落とされた要素があるものの、やはりビジュアルの力は強い。
フェイギンの見た目のいやらしさ…。見た瞬間に関わりたくないと思う見なり━━汚い歯、伸ばしっぱなしの髪、卑屈な表情。
子どもたちやビル・サイクスも同様で、服装自体は紳士のようなのに、あまりにも生地がボロボロで薄汚い。
そもそも構造がグロテスク。子ども(青年ではなく少年)を集めて作った窃盗団…。これが弱さの象徴に見える。フェイギンもビルも小物感を感じる。
大人に相手にされないから子どものコミュニティの頂点に立とうとするのって、めちゃくちゃ幼稚じゃないですか?
小物感と哀れさがすごい。
小説は今読み進めている最中なのでまだわからないところもありますが、Wikipedia情報と合わせて考えると、BBC版はかなりマイルドになっているのではないかと感じました。
BBC版はフェイギンは老人に近い中年、ビル・サイクスは20代半ばに見えるんですが、Wikipediaを見ると前者は老人、後者は35歳だそうで…哀れさが増す。
少年ばかり集めるフェイギン…小児性愛者か?とも思いましたが、そういう描写は劇中になかったし、女を馬鹿にする部分があったりするので、単純に自分がコントロールできる存在=子どもが扱いやすかったのだろうと思います。
彼は彼なりに子どもたちに愛着があったのかもしれない…(my dear…と子どもに呼びかけるシーンも多い)
オリバーを助けたのがスリの被害者というのも、彼がお金持ちだったのも、出来過ぎだろ!?と言いたくはなりますが、貧民窟の暮らしや人物の描写をしたいのなら、それはそれでアリなのかもな…
ブラウンロウがエドワードに詰め寄るシーンはセリフの抑揚が強く、話しているだけなのにミュージカルみたいだと感じました。
で、今回この話がミュージカルとして上演されるんですが…
その前に、ビル・サイクスのクズぶりを語らせてくれ!!
ウェットなクズ、ビル・サイクス
もうねーーー、ビル・サイクスがダメな男だしクズすぎるんですよね!
彼は自分の盗品をフェイギンに渡して金銭を得ている立場なのですが、そんなこと関係なくフェイギンに暴力を振るう。気に入らないことがあれば怒鳴り散らす。
例えばオリバーを脅すシーン
👨「怖くねえのか?」
👦「もっと悪い人も」
👨「俺より悪い? そんなの いねえ、絶対に」「俺は誰より悪い野郎なんだ」
このイキリ感。
ビルと仕事がしたくないとオリバーがナンシーに伝えた際は
👩「怖くないよ」「役に立てば大事にしてくれる」「悪い人じゃない」
と言われています。つまり、役に立たなければ大事にしてくれない訳です。やだ怖い。
原作では死因が違うそうですが、BBC版は首吊り自殺です。個人的に一番「こいつ駄目だわー、クズだわ…」と思ったのはナンシーとのやりとり、関係性です。
ナンシーはオリバーより小さい頃からビルに仕えていた女性(Wikipediaより)。フェイギンからも「サイクスを止められるただ一人の人間」と評されています。
BBC版だとバックグラウンドは明記されておらず、二人は恋人なんだな、くらいの描写なのですが、まあビル・サイクスの自己中心的な行動がひどい。
以下は撃たれたオリバーを介抱するためにフェイギンのところに行こうとするナンシーとの会話です。
👨「(ベッドから身体を起こすナンシーを引き戻しつつ)どこへ行くんだ?」
👩「オリバーの所よ」
👨「俺が撃たれてれば世話してもらえたのに」
👩「今までも世話してきたわ。これからもするわよ」
う、う、うわーーー!!お前のせいでオリバーは撃たれたんだが??何言ってんだこいつ!! ナンシー優しいね…ここからなんとなく二人の関係を察することができるシーン。
しかし心やさしいオリバーと接するうちに疑念が生まれたのか、ナンシーは尋ねます。
👩「ビル?愛してる?」「どうなの?」
👨「俺が寝ぼけてる時に…」
👩「答えて」
👨「今さら やめろ。早く行ってこい」
うわーーーーーー!!!キングオブクソ!!!!
これは絶対に愛してると言ったら負けだと思っているクズ!自分が優位に立ってないと我慢ならないクズの台詞です。
オリバーの看病から帰ってきたナンシーにもブチギレするビル・サイクス。彼女がドアを開けた瞬間、飛びかかり首を絞め怒鳴りつけます。
👨「今までどこに?」「隠れて何してた?」「誰と何してた?」
👩「あんたの酒を買ってたのよ」
床に落ちて割れた瓶を見て納得したビル。一瞬眉を曇らせて言います。
👨「出てったかと思った」
👩「まさか あんたは私の男よ」「私はあんたの女でしょ?いつまでも一緒よ」
でもこの後に続くセリフがクズ。
👨「俺に逆らったり裏切るような真似をしてみろ。その時は殺す」
うわーーーーーー!!!大層なクズ野郎じゃないですか!
ちなみにこの時ビルはナンシーの浮気を疑っていますが、自分は他の女と寝ることも珍しくない模様(どうしたの?女でも漁ってたの?という劇中のナンシーのセリフより)
自分はいいけど相手は禁止、自分に絶対服従しなければ命の保証はないと脅す男。ナンシー、この男のどこがいいの!? BBC版の設定はわかりませんが、「今までも世話してきた」とのセリフから、そこそこ長い付き合いであることが想像できます。
ストックホルム症候群や共依存みたいな感じになってるのかもしれない。
しかしこの男のクズさはこれだけでは終わりません。
「ナンシーが俺たちを密告した」というドッジの報告により、フェイギンの住処に警察が来ることを知ったビルは、ナンシーが待つ自分の家へと帰ります。
・
・・
・・・
「立て。大丈夫だ、立て」
返り血で顔を真っ赤に染めたビルは、鼻をすすりながらナンシーに声をかけます。
「忠告しただろ。裏切ったらどうなるか、何度も忠告したのに」
「何て事をした」
「いい加減に立てよ、大したことない」「大丈夫だって」
「起きろよ」「ナンシー」
目を開いたまま倒れているナンシーの頭の下には血溜まりができていました。
えっ何なのビル・サイクス!サイテーかよ!
この後に及んで自己正当化をし、相手を撲殺しておきながら「起きろよ」です。しかも泣いてます。サイテーの満漢全席でも作るつもりか??
この後ビルは、フェイギンの住処からオリバーを強奪しロンドンを離れます。しかし道中の森のそこここで微笑むナンシーの幻覚を見て、「あいつらを追い払うために賛美歌を歌え」とオリバーに命令します。
正気を失ったビルは街に戻りますが、ナンシーの幻影はついてきます(動転するビルの隙をついてオリバーは逃亡)。ついには人通りの多い道で「ジロジロ見るな、目をえぐられたいのか」「俺がビル・サイクスだ!」叫び出し、自らがナンシー殺しの犯人、ビル・サイクスだと周りに告げてしまいます。
追われるビルは下水道に逃げ込みますが、そこにも現れる幻影、ナンシー。
「絶対に別れない。あなたの女だもの」
「ビル、私を愛してる?」
これ、「今までも世話してきたわ。これからもするわよ」「まさか あんたは私の男よ」「私はあんたの女でしょ?いつまでも一緒よ」
の駄目押しですよね。
そしてビル・サイクスは暗い下水道で首吊りをして終了━━━━━━
いやーーー、もうねえ、最低!機嫌の悪さで周りをコントロールしようとするのも、女を所有物扱いしてるのも、長年一緒にいる女がどれほどの気持ちで自分と対峙してるのかも理解できてない訳ですよこの男は。
でも一丁前に罪悪感と恐怖があるから、撲殺した相手が死んでいると認められずに「大したことない、大丈夫だって。起きろよ」などと言えてしまう。
どの人間にも心を開けず、唯一の味方だと思っていた飼い犬にも逃げられる。
何が嫌って、ウェットなクズってところなんですよ。
ナンシーがしばらく戻らなかったら心配になって詰め寄る。暴力で支配しているから(負い目があるのか)相手からの「愛してる?」に答えられない。本当はナンシーしかいないのに。そして結局ナンシーの幻影を見て首を吊ってしまう。
最低のフルコースすぎてお腹がいっぱいです。幼児性の塊みたいな男だな、ビル・サイクスよ。はー、最低!
BBC版オリバーツイストを観た感想。
— かんそうぶん (@KansouBn) 2021年7月7日
ビル・サイクスのいいところ、犬にやさしい。
以上
おそらくこれはビル・サイクスにも人並みの感情があるように見せる、装置としての演出なんですよね。飼い犬のブルズアイを蹴飛ばしたフェイギンの胸ぐらを掴んで怒ったり、ふとしたときにブルズアイを撫でていたりする。
だからこそ終盤の森のシーンでブルズアイに逃げられるのが哀れ。
あとね、小説だと犬を蹴飛ばしてました。だからやはりビル・サイクスは最低です。
推しがクズを演じる!!!
酒癖が悪く粗暴なこの男を推しが演じるのか〜!と思うとわくわくが止まらないです。舞台への期待が爆上がりした。
なぜかというと、わたしは推しが演じるクズが好きだからです。
わかりやすいクズは、やはりジャージー・ボーイズのニック・マッシでしょうか。
フォー・シーズンズのメンバーは全員クズですが、ニックはウェット系クズです。自分の実の子どもに自分をニックおじさんと呼ばせ、他人のふりをしながら女遊びをするクズ。しかもなぜか被害者ぶってるし…カトリック教徒なのに不倫してるし…
デイビーはドライ系クズですが、ニックとオキソはゴリゴリのウェット系クズです。
暴力!悪!乱暴者!みたいな役は銀牙の赤カブトで観たのですが、今回はマジのマジでただのクズかつモラハラ野郎という感じで狂喜乱舞してます。
BBC版は原作と違うラストだと小耳に挟んだけど、これはこれでいいなと思いました。なぜならビル・サイクスでが精神的に幼稚でウェット。濃縮されたクズだったので。わたしが求めていた推しに演じて欲しい役の要素が過積載。spiさんキャスティングした人天才か??と思ってます。
早くきてくれ公演期間!
どんなビル・サイクスになるのか楽しみなので、BBC以外のオリバー・ツイストも観ることにします。
最後に推しの意気込みを再掲&公式Youtube画像のリンクを。
【インタビュー🎤】「一番嫌われたい」spiが語るミュージカル『#オリバー!』✨
— げきぴあ byチケットぴあ (@gekipia) 2021年7月7日
傑作ミュージカル『オリバー!』にて #原慎一郎 とのWキャストでビル・サイクスを演じる #spi に話を聞いた🙌https://t.co/eTbf1aKyU2
推し、なんでこんな胸元はだけてるんだろ。謎。
それでは皆さま、良い推し事ライフを!!
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