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ミュージカル オリバー感想

 

ミュージカルオリバー感想、考察など

ミュージカルオリバー!
(カテコは撮影可能タイムあり)

 

2021年9月末、ミュージカルオリバー! の上演が始まりました*1

 

プレビュー公演のキャストスケジュールが発表されないままチケットの抽選が始まったり、プレビュー公演が始まったのに本公演初日のキャストスケジュールが発表されなかったり…と、オタク的にハラハラすることもありましたが、無事に開幕。数公演観劇した時点の覚書きです。ネタバレあり。

 

 

公式サイト

 

 

▼上記よりあらすじ引用▼

物語の舞台はヴィクトリア朝イングランド

救貧院で食に満たされることのない暮らしを続けていた孤児のオリバーは、下働きに出された葬儀屋でひどい仕打ちを受ける。

逃げ出したオリバーがたどりついたのはロンドンの街。

彼はそこでフェイギンという老人が元締めを務めるコソ泥とスリの集団に取り込まれる。

スリの濡れ衣を着せられ、捕らえられたオリバーは、その被害者である親切な紳士ブラウンロウ氏に引き取られた。

アジトを知られることを恐れたフェイギンは、冷酷なビル・サイクスと心優しいナンシーを使ってオリバーを力ずくで連れ戻そうとたくらむ。

オリバーは本当の家族の愛を見つけることができるのだろうか―。

 

 

 

大勢でのダンスと歌

ミュージカル オリバー!にはたくさんの楽曲が登場します。


主人公オリバーにとって、これは希望の物語だと思うんですよ。救貧院で生まれ育った彼にはすべてが新しく新鮮で、ロンドンの街並で歌われる『信じてみなよ』『誰が買うのだろう』は、彼が初めてみる色づいた世界を表現した曲だと感じました。

 

大勢の大人と子どもが舞台上でパワフルに歌って踊るシーンは、役者にとってもこの状況下を生きるわたしたち観客にも、希望の象徴だと言えるかもしれません。

 

オリバーとの出会いでギャング団が離散したり死人が出るので、そちらにフォーカスすると暗い。でも演出家が言うように「グッドネス」を描いた(描きたい)作品なのかな

 

 

舞台のセットや小道具がすごい

びっくりしたのが舞台美術。天井まであるセットに、お金かかってるなー!と思いました。全体を通して10パターンくらい?セットがあったんじゃないかな。

 

冒頭の救貧院は1968年のミュージカル映画のセットそっくりの重厚な見た目。天井近くにある格子のはまった窓が割れていたり、丸く拭かれており角が汚れているのがリアル。つまり窓が割れても修理をしない、汚れていても隅まできっちり掃除をしないような環境だとセットからわかります。


ブラウンロウ氏の邸宅は白く洗練された建物が周りに並び、富裕層が住んでいる立地だとわかる。ギャング団の元締めフェイギンのアジトは薄汚れて雑然としている。

 

観客の想像力に委ねて同じセットでストーリーが進行する舞台も好きだけど、ビジュアルで没入させてくるセットもいいなと改めて思いました。

 

ビジュアル繋がりで言うと小道具もそう。救貧院で大人用の料理が運ばれるシーン。
大きな七面鳥やブルブルと揺れるゼリー、熱々なのが分かる湯気が出ているご馳走。とにかく目で見てわかりやすいように作られている。

 

本物の火を使った松明で犯人を探すシーンは、キャストたちが鬼気迫る表情で客席を照らすので、こちらが責められているような気持ちになりました。こんなに血眼になって探されたらそりゃ怖い。

もしかしたら皆ビル・サイクスへ相当の恨みを抱いており、反撃できるチャンスを伺っていたのかも…(切ない)

 

 

 

キャラクターについて

すべての中心・オリバー

舞台に限らず原作小説もそうなのですが、オリバーの行動で物語が進む部分が多い。

この話ってオリバーが何かを成して話が進むんじゃなく、オリバーの登場によって既存コミュニティの均衡が崩れてイベントが起きてるんですよね。まわりの大人や子どもからすると、天使だったり疫病神だったりする。

だからキャストも邪気がない感じの子どもがキャスティングされたのかしら(逆に、邪気がある子役とは?って感じもしますが…)

 

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キャストのひとり、エバンズ君の「バイバーイ!」がめちゃくちゃかわいい。

 

 

 

小さな紳士ドジャー

この物語ではしばしば登場人物が、貧しいはずの自分達を指し「紳士」「淑女」という言葉を使います。ブリティッシュジョーク??かとも思ったけど、ドジャーだけは本当に紳士になりたかったのかも。

 

ナンシーの「本物の上流階級を見たことがあるの」のセリフに紳士らしく振る舞うところもそうだけど、終盤で帽子を取りに帰るところは紳士の矜恃、紳士のシンボルとしての帽子を大事にしているのかと思いました。

 

余談ですが、ドジャーがナンシーをレディとして扱う『何でもするよ(I'd Do Anything)』で、ナンシーが「ビルと戦う?」と問いかける部分があります。

これ、英語だと「Even fight my Bill?」と言ってて、わー、キツい…。

背伸びをして紳士的に振る舞っても、ナンシーは暴力を振るうビルを「私のビル」と言ってるわけです。つらいなドジャー…(ちなみにBBC版だとナンシーの遺体の第一発見者はドジャー、第二のビル・サイクスのように生きていくのもドジャー)

 

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謎が多いフェイギン

フェイギンの年齢は明らかにされていませんが、ナンシーと15年ほど付き合いがあること、ビルの子ども時代を知っていること、シワだらけの容姿から、結構な歳かと推測できます(その割には老後を心配しているので、えっ!すでにおじいちゃんでは!?と思った。)

読み書きができ、哲学書を持っているので、ある程度の教養がありそう。

自分でも根っからの悪人ではないと言ったりビルの暴力について異を唱える通り、善悪の分別はついているんだと思う。ただし『ポケットからチョチョイと』で歌うように、スリは悪いことではないと思ってそう。

可愛げがあって、良い部分も悪い部分もあるキャラクターでした。だから子どもに好かれるんだろうな。

 

しかしひとつ引っかかってる点があるんですが、ビル・サイクスって文字が読めるんですかね。フェイギンがビルに本を渡す場面、ビルが文字を読めない場合、かなり皮肉な感じになると思います(読めなさそうだよね、現役のギャング団10人の中で読み書きができるのはディッパーだけって書いてあったし)
 

 

 

愛に生きる女ナンシー

フェイギンのもとで5,6歳から15年働いていたナンシー。今はビル・サイクスと一緒に行動をしているので、現在は20歳ちょっとすぎかと思います。

この物語で一番見る人によって意見が分かれそうなのがナンシー。ダメ男好きのかわいそうな人にも、パワフルに生き抜く女傑にも見える。

 

わたしは初め「いや、分かるけどその男はだめな男なので、まじでアカン、ナンシー…」と同情したのですが、回を重ねると「この人めっちゃくちゃ強いな!?」とも思うようになりました。

 

多分ナンシー本人も、ビルがだめな男というのはわかってるんですよね。

 

ほかの誰かに愛せるというの

ナイフのような彼のこと

あんたたちにはどう見えようと

彼にはあたしが必要なの

 

あたしが彼の帰る場所を

守り続ける どんな時でも

 

あたしたち2人闇の中で

巡り会えた道連れなの

ひとりぼっち生きてきたあたしには彼だけ

彼に必要とされる限り(As Long As He Nees Me)

 

 

 

 

いや、分かる。
分かるんですけど、絶対だめじゃん。フェイギンのもとで盗みをしているときに出会って、「この人だ」って思って押し掛け女房したのかなと勝手に思ってるんですけど、若気の至りじゃない!?

ビルって原作で確か38歳なんですよ。ナンシーと18くらい離れてる。お互いの状況がうまい具合にハマって一緒にいるんだと思いますが、18歳年下の女の子に何かしら(多分そこには母性なども含まれてる)を求めるのって、割とグロテスクですよね。

 

現代の価値観を当てはめるのはな…と思いつつ、18歳差…未成年…と考えると、モヤモヤします。

 

 

幸せな結婚

穏やかな家庭

憧れるけど…

あたしはいいんだよ

これが

人生

(これが人生 It's a Fine Life より)

 

あんなめちゃくちゃな男に惚れているにも関わらず、幸せな結婚や穏やかな家庭に憧れているから、ナンシーの人生ハードモードって感じです。

 

幸せへの憧れがあるからこそ、悪いことを知らないまっさらなオリバーに希望を見て、オリバーをかばったのかもしれません。
 
 
 
ナンシーは強い…と思ったのは自分の意見をはっきり言うところ。結構ビルに盾突いてるんですよね。
彼が望むなら何でもやるわ
正しくても間違いでも

 

こう言っている割には、オリバーを連れ戻すときやアジトに連れ帰ったときに、ビルに反駁している。ちゃんと自分の意見はビルに言うし戦う、そこが他の人と違うから、ビルはナンシーをそばに置いているのかなと思いました。(おもしれー女枠)

 

 

 
 
 

問題児ビル・サイクス

名前を呼んではいけないあの人みたいになってたビル・サイクス。
確かにワルなんだけど、もはやビル・サイクスという名前や存在を周囲が恐れていたのではないか。菊池寛の「形」みたいな感じで。パンフにも書いてあったけど、まわりの人が「ビル・サイクス」を作り上げたのかもしれない。
ナンシー以外、誰もビルの内面は見てなかったんだろうなと思います。かわいそう。

 

 

 

 
プレビュー公演ではナンシーを撲殺する際に意味のある言葉を発していなかったのですが、本公演では「俺を見るな!」「目を閉じろ!」と言いながら棍棒を振り下ろします。
 
俺を見るなじゃねーんだわ。
 
身勝手の極みです、嫌だなー、クズだなー!
最期の時、ナンシーはどんな表情をしていたのか。この台詞で観客に疑問を投げかけることに成功しているし、二人の関係に奥行きが出る
 
この変更最高だな、誰がやったの?推し?と思いましたが(推しは割と演技を変えてくる)、海外のOLIVER!でも英語で同じようなセリフを言っていたので、監督の指示なのかもしれません。プレビューと本公演を観た人へのサプライズか??
Wキャストの原さんがどうなってるかまだ確認できてないので、次観にいくのが楽しみ。
 
 
このセリフの変更で舞台版のビル・サイクスの厚みが増したので、回を重ねるうちにどういう風に演技が変化していくのかわくわくします。(推しが演じるクズの役がとても好きだし、哀れでかわいそうなクズが好きなので…)
 
 

パンフレットにはナンシーとビルについて「お互いを求め合う関係」と書いてるんですが、「強い男を得た自分」に価値を見出している部分もあるのでは…と少し思いました。それが自分の自信にもつながっているというか。そう考えると「求め合う関係」という表現は納得。

 
 

キャストあれこれ

まだまだ観る予定なので、現時点で印象に残ったキャストの話。

 
・ドジャー役の川口調くん
特技のバトンを取り入れた演技がかっこいい!
 
・ドジャー役の大矢臣くん
滑舌が良くて台詞が聞き取りやすい。声が低いこともあり、兄貴分!って感じ。
 
・ニッパー役の髙橋維束くん、渡邉隼人くん
ソロパートもフェイギンを騙そうとするところも、小脇に抱えられるところもかわいい
 
・ビル・サイクス役の推し(spiさん)
畳み掛けるように喋るところが好き。魅力的なクズの演技がべらぼうにうまい。哀れでかわいそうな暴れん坊ビル・サイクスをどう表現するか、どう変えてくるのか楽しみ。
 
 
内容について取り留めなく書いてしまったので、次はもっと個々の演技などについて書きたい。
 
 
 
 
それでは皆さま、良い推し事ライフを!!
 
 
 
 
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今のところBBC版のビルが一番クズ

 

 

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*1:9月30日〜10月6日までがプレビュー公演、10月7日〜本公演