【小説】若手俳優のオタク全員「りさ子のガチ恋♡俳優沼」でふるえてほしい〜わたしたちは皆、りさ子を心に飼っている〜
りさ子のガチ恋♡俳優沼、再演が始まりましたね。
初演を知ったのは公演が終わってからだったのですが、今回はわたしも観劇します。やったー!
再演のチケットは完売、当日券の有無は随時発表とのこと。
ということで(?)観劇前に小説版の感想を書きます。
クリティカルなネタバレはなし。
小説版あらすじ
26歳、彼氏なし。OLりさ子の趣味は舞台鑑賞で、若手イケメン俳優の翔太君を追いかける日々。2.5次元舞台『政権☆伝説』に通い詰め、高額プレゼントを贈る。「がんばってる姿を観られるだけで幸せ」とお金と時間をつぎ込み、彼からのちょっとした「特別扱い」にときめいていたが、ネットで彼に彼女疑惑が持ち上がり...
思い込みが激しい主人公・りさ子が少しずつ道を踏み外していく話です。りさ子の視点から進むオタクサイドの話、そしてりさ子の推しである翔太君の同業者・あっきーの俳優目線が交互に挟まって進む物語。後半はイケメン俳優翔太君の彼女、グラビアアイドル篠戸るるの目線で物語が語られます。
愛ゆえに暴走するオタクの気持ち、俳優側のファンへの赤裸々な本音や人前に立つ仕事の恐怖、舞台俳優のオタクを遠巻きにみる「普通の人」の目線、クレイジーなオタクを身近で見る、るるの視点…。
様々な視点で語られる、「オタクと推し」
主人公・りさ子が最後に見つけた結論とは……?
以下、詳細。
もくじ
カリカチュアされた登場人物と設定
プロローグを読んで思ったのは、「あれ、これはてブロかな??」でした。
めちゃくちゃ既視感がある。よくブロググループで見る気がする。ポエムエントリ*1だ!!! このクオリティの高さよ…!
全体を通して若手俳優のオタクあるあるが散りばめられていて、わー、これは作者の松澤くれはさんは色々リサーチしたんだろうなあと思いました。ブログとかTwitterとか匿名掲示板とか闇が深いアカウント(婉曲表現)とか…!
これを読んだだけで大多数の若手俳優のオタク(新規層、非ガッツ、一番多くを占める層)のざっくりした雰囲気がつかめるんじゃないだろうか。(個人の意見です)
P26
「ふたりとも、明日仕事?」
「普通のOLなんで。りさ子もでしょ?」
こ、この微妙な距離感〜!なんの仕事なのか詳しくは知らない感じ、あるあるじゃない? 主人公りさ子と同担のたまちゃん、アリス。この三人のキャラの「実際にいそう感」、リアルさがすごい。
まずはアリス。認知症の祖父がおり、なかなか現場に入れないのを気にしている。
いつだってロリータファション。りさ子曰く「全く似合ってない」し、よく同じワンピを着てる(からあまり服を持ってないのかとりさ子は思っている)。身だしなみにあまり気を使わないタイプなのか観劇も接触イベントもすっぴんで行き、「推しに会いに行くのに…!?」とたまちゃんに内心引かれてる。
「二次元から入りました!」というオタクをわかりやすく体現したようなキャラクター。現実を細かく区分していくと、メイクに関してはすっぴん派、普通に化粧をする派、化粧に凝る派(レイヤーとか)がいそう。で、ゴリゴリの二次元から参入オタクで「一般人に擬態してない」タイプだと
- ロリータ
- 和モチーフ多用ファッション
- 記事の安さをギャザーやフリルでカバーするガーリーファッション(axes femmeとか?)で、毛玉とかシワとかついてる(あまり気を遣わない)系
- 着物で個性をアピールする系
- オタクモチーフ多め(猫耳フードとかニーハイ萌え袖)
とかになりそう(主観です)だけど、キャラクターの記号としてロリータがわかりやすいからこのチョイスなんだろうなあと思いました。(痛バアピール系は敢えて外してます。なんかこのキャラクターたちは「二次元のキャラのファンじゃない『翔太君本人が好き』なファン」ってアイデンティティがありそうなので)
P21
アリスの追撃は終わらない。「どういうことよ?」と言いながらぐいぐい体を密着させる。ほのかに汗の匂いがした
この部分の、くれはさんのうっすらとした毒よ…!!
次はたまちゃん。
岐阜在住の遠征が必要なオタク。「推しのために貢ぐ」「推しのための生活」「遠征民の自分より頑張ってない東京のオタクにファンだと名乗って欲しくない」「茶の間が信じられない」という、【推しを人生の軸にしておりマウント気質が激しい、自分の努力を認めて欲しいオタク】タイプ。
い、いるー!! がんばりを他者にも要求するオタク、いるーーーー! そして「推しに貢ぐ」発言する人、いるーーー!!!でもこのたまちゃん、推しの翔太君の舞台の千秋楽を「円盤待ち」とはじめは言ってたりするので、実際は声だけ大きくてあまりお金をかけてないタイプではないだろうか…。うわあ、めんどくせえ…!
そして掲示板の評判を気にしてたり、同担を監視するタイプ。●●県から来た同担がプレボを覗いてた! あいつは同担拒否でぼっちで可哀想〜!とdisったり、掲示板に自分を指した書き込みを見つけて気にしたり。い、いるーーー!わざわざ同担監視しに行って不機嫌になるタイプーーーー!!!
「理想のオタク像」があって推しのためアピールが激しい人って、他人を積極的に監視しに行く傾向が強い気がする。どうしてかというと、オタクが自分の努力が無駄じゃないことを証明する方法って、①推しに承認してもらう、②自分が満足するの二択だと思うんですね。あとは同担や他担のオタクにヨチヨチしてもらって一時的に承認欲求を満たすか。
でも、①ってブラックボックスじゃないですか。本当の本当に承認してもらえたかどうかなんて、「推しとオタク」の間柄じゃわからない。
だから自己の評価の為、常に誰かと比較する必要がある。誰かを下に見て一時の心の安寧を求めるのだろうなあ…
まあ実際はそんなことしても何も解決しないんですけど…(という話はそのうち別エントリで書きます)
そして主人公、りさ子。
はじめは「一般人」の同僚に「自分は親目線」と言っていたり、たまちゃんにガチ恋かと問われてとっさに否定します。が、実はのっけからやばい。やばさマックス。それが終演後、お見送りでの翔太君とのハイタッチを反芻するシーンに表れています。
P23私のそんな奥手な心情を察してくれたのか、タッチの瞬間に、翔太君が指を曲げて、私と一瞬だけ手を繋いだようにしてくれたのだ。翔太君の顔を見ると「いつもありがとう」とか「わかってるよ」みたいに微笑んでいて……私にだけ、誰にも気づかれないようにファンサービスをくれた。ふたりだけの秘密のメッセージ。生きていてよかった。
P51少し遅れて、またふたり組が歩いてくる。「きた。翔太君」姿がほとんど見えなくても、フィーリングでわかってしまう。
P51お手紙を、言葉を届けなければ、今日の翔太君が起こしてくれた「奇跡」(ハイタッチのこと)すら台無しになっちゃう。翔太君に対しても失礼だ。お礼もしっかり伝えるんだ。
P198(愚痴垢の発言) 「翔太も変わっちゃったよね、昔はそんな風じゃなかったのに……」違う。検討はずれ。翔太君は変わっていない。あなたに翔太君の何が分かる?私はずっと見守ってきた。勝手な親目線に私は呆れ返る。
りさ子、ずっと見守ってきたと言っていますが、翔太君を推しはじめて1年半です。
推しぴ〜♡しゅき〜♡って毎日言いながら、この話に触れた時に「えー、ないわーw」「わたしは違うしw」って言ってる人ほど自分がやばいオタクって自覚がなさそう。
わたしは自分自分について、『厳密にいうと「若手俳優のオタク」でも「若手俳優のファン」でもなく、「推しが好きでその栄枯盛衰を見守りたい人間」でしかないなあ…』と思っているのですが(それをいちいち書くのがめんどうなので「オタク」を自称することが多い)、そんな半端なわたしも「ああこれはわかるぞ…!」という描写がたくさんあるし共感する。(オタクとかファンの定義ってなんだ、という話はちょっと置いとく。もしくはこのエントリを読んでください。うっすら関係することを書いてる)
同担同士の関係性と「オタク」の描写
りさ子、アリス、たまちゃん。
この同担3人組、「いるよねこういうオタク…!!」を体現したようなコミュニケーションを取るなと思いました(と言っても、概念としてのオタク、イマジナリーオタクだけど…)
この三人ってきっとお互いのことを別に好きじゃない。利害が一致しているから一緒にいるだけです。3人の中ではりさ子がリーダー。自分が一番翔太君を好きだし細かいところを見てると思ってる。たまちゃんはりさ子に一目置きながらも遠征民の自分は愛は負けないって内心で思っている感じ。アリスはコバンザメポジで、二人からおこぼれをもらおうとしている。
でも、表向きは「仲良し」なんですよね。たまちゃんがアリスへの不満を漏らすシーンはありますが、3人に関わる決定的な事件が起きるわけではない。
現実に例えると「大好きなお友達」という茶番を同担同士でやってる感じでしょうか。(なんか中学生がズッ友だよ♡と言いながら裏でバチボコに誰かをdisってる感じを彷彿とさせる薄ら寒さ)
だからこそ「自分たちは同じ人が好きなだけの関係」とあえて台詞に出させる部分が戯曲ぽいなと感じました。(りさ子に気づかせるための発言とはいえ、現実で馴れ合ってるタイプのオタクは絶対に口にしそうにないドライな発言だ)
オタク、ほかのオタクを気にしすぎ問題。
- 相対評価でしか自分を評価できない
- オタクとしてあまり火力が高くない
- 自己肯定感が低い
オタク、狭いコミュニティの「常識」「願望」を拡大解釈して真実と混同しがち問題
翔太君はりさ子の方を見てた、こっちをチラチラ見てたのはりさ子に目線を送ってたからだ、そんなオシャレしてたら翔太君に可愛いって言われるんじゃない?
しかし、翔太君のライバル俳優・あっきーも語っていましたが、オタクにとって推しはただ一人だけれど、推しからしたらオタクは沢山いるファンの一人です。こっちは向こうをよく知っている(ような錯覚をしている)けれど、推しはこちらをよく知りません。
推しは絶対に現場で自分を見つけてくれるし絶対にファンサをくれると思ってる人、かなりやばいと思うし、やってくれなきゃおかしい!まで思ってるとしたらもう末期だと思う。
— かんそうぶん🌸🤧🐈🦑🌬 (@KansouBn) January 23, 2019
仕事中に大勢の中からただ一人を見つけ毎回絶対ファンサを…?あるかもしれないけど、ないのはおかしい!まで行くと怖い。
推しが自分にファンサするか否かの主導権をいつから自分が握っていると錯覚していた…? 推しが誰にいつファンサするかどうかの主導権は推しにしかないですよ…。1人の役者と大勢のファンの1人でもなく、1対1の関係ですらなく、自意識が肥大化しすぎてて自分を一番上に据えてるよね。なんでや。
— かんそうぶん🌸🤧🐈🦑🌬 (@KansouBn) January 23, 2019
オタク、割と「あれ絶対○○ちゃん宛だよ!」とか言いだと思うんだけど、実際のところは誰宛てのファンサなのかって観測不能じゃん…。で、身近な人に物事を結びつけたり好意的に考えがちなので、そういう盛り上がりをすると思うんだけども…。
— かんそうぶん🌸🤧🐈🦑🌬 (@KansouBn) January 23, 2019
妄想と事実の壁を飛び越えてる人は怖い。
オタクが知りたい「推し」サイドの本音
「推し」の本音…と言いつつ、りさ子の推し「翔太君」の本音は出てこないのが救いだなーと思います。出てくるのは翔太君のライバル俳優「あっきー」が語る赤裸々な本音。
P37
「ぬいぐるみ……奇怪なオブジェ……安っぽいキーホルダー……絶対に着ないTシャツ」
これはあっきーが語る、「ハズレ」のプレゼント。これに被弾する人は多そう。
イラスト入り色紙がハズレのハズレと言ったり手作りクッキーをゴミ箱に入れたり。うん、でも普通にいらないよな…プロのイラストレーターの色紙ならわかるけども、それすら好き嫌いはあるだろうから、せめて便箋に描くくらいがよくないだろうか…そのほうが場所を取らないし。…そして手作りのお菓子とかほんと怖いし。
プレ、どこまでいっても自己満足にしかならないですよね。
「推しへの愛を手作り品で表現♡」という推しから承認されたい欲求をぶつけるとか「着用報告きた!わたしって結構好かれてる…?」という一足飛びの超理論展開はやめたほうが精神衛生上いいよね…と思います。
抱えきれないほどのプレゼントをもらっているであろう俳優サイドからしたら、「誰からのプレゼントか」ってそんなに気にしてないのではなかろうか。(ファンの母数が小さいとまた話は別だと思いますが)
みたいな話(プレと個人の自意識とか推しからの好意云々)はまた書きたいし、下記にも書いたのでよろしければ。
「自分のがんばり」「相手への気持ち」「作品のクオリティ」 これらをごちゃまぜに考えてしまうこと、「至らない部分もあるが、あなたのことを思って一生懸命作ったから受け止めてほしい」という甘えが生じてしまうのも大きな原因のひとつかと思います。 再度言いますが、「他人は作品発表の場でも、あなたのおかあさんでもない。」
愛という名の下に、私たちは暴力を振るってはいないか?〜推しへのプレゼント問題〜 - 晴れた日のねどこ
あっきーが語る本音や心情はドライだ、ショックだと感じるオタクも多そうですが、これってまごうことなき真実の一面なんじゃないかなあと個人的には思います。
オタクは俳優を客体化して消費するものです。そう、どんなに「応援」と言ったって、そこにあるのは綺麗なものだけではない。突き詰めれば「推す」というのは消費行動です。
自分をコンテンツとして消費者に差し出す/生きている人間をコンテンツとして楽しむグロテスクな関係。自分の人生の手綱を手放したりそこにウェットな感情を持ち込めば持ち込むほど、演者でもオタクでもドツボにハマったり病んだりするものだと思います。
毎日関わる人とですらミスマッチが起きるのに、「俳優とファン」でしかない間柄が「正しく感情を交換」できるのか。
それってきっと大昔から繰り返されてきた議題のひとつで、だからこそそれが成立することをわたしたちは夢みるし、祈るし、願う。「正しく通じ合った」という幻想がわたしたちを生かすし、それが推し続ける活力になるし、その一瞬が尊くて奇跡のように感じるし、同時に狂わせもするのだと思います。
あっきーは、自分を見失わないように、俳優として舞台に立ち続けられるように、ドライになることで身を守りたかったのかもなあと思いました。
まあでもオタクも馬鹿ではないので、そういうのはどこかで伝わりそうだよね…!!
マジョリティである「一般人」とマイノリティの「オタク」
作品中にはオタクと推し以外の人間も出てきます。
それがりさ子の同僚たち。オタクであるりさ子の行動に理解を示さなかったり、馬鹿にしたり、「オタク目線」からするとズレた発言をしたりする「一般人」。
りさ子が同担のアリス、たまちゃんとつるむのは、一人で推すことに耐えられないからです。そしてその二人を選んだのは「抜け駆けをしなさそう」であり、彼女たちが「(容姿、財力、歴、発言力などが)優れていない」からです。
三人の中では比較的優位に立てるりさ子ですが、劣等感が強く、自己肯定感が低い。そして(作中ではっきりと描写はされていませんが)、その他のオタクと殴り合い渡り合うほどの火力もおそらくありません。
アリス、たまちゃんといれば相対的に「強いオタク」でいられるりさ子ですが、「翔太君のオタクの同担3人組」という枠を取っ払った時、彼女の本来の自信のなさを刺激するのがこの同僚たちの存在だなあと感じました。
りさ子は短大卒の26歳、データ入力の会社に勤続5年。
同期入社で仕事ができ、「推し事に現を抜かすりさ子を馬鹿にしている」早希絵。
愛子は「特権階級」。会社の社長の娘だから仕事をしなくても咎められない。男を取っ替え引っ替えして遊ぶように生きている。
りさ子をフォローしてくれる上司の美紀もランチは彼女らと共にしており、愛子の下半身事情を含む恋愛の話で盛り上がる。
会社でのりさ子は「新山さん」と呼ばれ、そこに居場所はない。
若手俳優のオタクって、「一般的な価値観」との狭間で悩む人が多いと思います。
推しを追いかけてばかりで恋愛をしてなくていいのかとか、同期は仕事で成果を出しているのに自分は仕事に打ち込んでいなくていいのか、とか。
キャリアアップ、恋愛、結婚、未来の生活の心配などなど。
「一般的な価値観」に直面した時に、「わたしってこのままでいいのかな」とふと立ち止まって悩んだり、劣等感に苛まれる人も多いんじゃないでしょうか。
個人的には「なんでもええんちゃう!?自分がOKやったらな!!(突然の大阪人)」と思いますが、推し事に邁進してる人ってその辺でぐらぐらしている人が多い印象があります。(そりゃ自分の人生の手綱を手放し、自らの軸となる部分をコントロール不可能な他人に依存しているから当然なんですけど)
余談だけど、バンドマンとか芸人と繋がってる(カキタレ的な意味で)人って、なぜかよく知らん他人に割と自慢げに話して来たりするような…。本人的にはそれをアイデンティティにしてたりステータスを感じていても、他人にとってはどうでもいいしドン引き案件なんだけど、本人が気づいてないのが闇深い。
まとめ
暴走するオタクの狂気だけじゃない。その根底の気持ち。
愛という免罪符を掲げ、俳優達を打ち据える「ファン」の恐ろしさや残酷さ。
りさ子が良い感情を抱いていない同僚たちや、本当には心を許していない同担のアリス・たまちゃんにも、それぞれの正義や考えや「常識」がある。
自分が知らない世界というのは、なんだか怖く感じてしまうものだと思います。
そしてひとつの場所に留まり続けると、いつの間にかそれが世界のすべてのように感じてしまう。自分の世界が正しく、知らない世界は「劣ったもの」だという認知の歪みが起きやすくなる。
「知って欲しかっただけ」
これがこの作品のキーになる言葉だと思います。
きっと作者の松澤くれはさんは立場が異なる登場人物の姿を描写する事で、それぞれの架け橋になるような作品を描きたかったのではないか。そんなことを思いました。*4
オタクと俳優。カノバレ、炎上。
一見キャッチーな題材ですが、これは話題作りのための演目ではなく、自分のファンとしてのあり方を見つめ直すきっかけを与えてくれる作品ではないでしょうか。空前の2.5次元ブームの今、この作品が小説として出版されたこと、そして再演が決まり観劇ができることを、ひとりのオタクとしてうれしく思います。
雑談
読了後にTwitterに書き殴った感想を抜粋してつらつらと。チラ裏です。
小説版、すごく読みやすいです。ラノベっぽいというか、するする読める。余白を作らず全部言葉で説明してくれてるから、読書慣れしてなくても読みやすい親切設計。LINEのトークルームやキュレーションサイト笑をちょいちょい挟んできたり、闇深いアカウント(婉曲表現)にありがちな目線と口調もばっちり描かれてます。
それぞれのエピソードやディテールはリアルなぶん、細かく見ていくと設定に矛盾を感じる部分もあります。が、それは多くの人が共感できるような仕組みにするためなのかもなと感じました。
具体的に言うと、プレのクロムハーツが「ボーナスの大半をつぎ込んだ」金額、使いすぎたというカードの請求額を具体的に書いてないのは、読者が感情移入できるようにだろうなとか、チケット入手の方法が「人気舞台に全通するオタク」のやり方としては片手落ち感があったりとか。(ところで短大卒入社5年目、データ入力(おそらく大した技能が必要ない)職種のボーナスってどれくらいなんだろう…手取り20あるのかなあ。社長令嬢云々のところとランチ代2,500円の部分はちょっと現実的じゃないなあと思ったりはしました。(りさ子の卑屈さや「一般人」との対比のために必要なところなんだろうなとは理解している) )
舞台版はあらすじを読むと最前全通しているみたいだけど、小説版は毎回最前ではなさそう。「自分をガッツだと思い込んでいる、割と通う方の井の中の蛙なオタク」なのでは、という印象です。
これは想像なんですけど、たぶんりさ子って「概念」なんですよ。若手俳優のオタクあるあるを集めた概念的存在。ほかのオタクと(ビジュアル、年齢、若さ、カネで)殴り合うキャラクターにすると、おそらく感情移入しづらくなると思うんです。感情移入ができるよう、突出した個性を消したキャラクター。だからこそ、多くの人が絶妙に感情移入できる(あるいは目を逸らして自分は違うと否定する)人物になっているのかなと思いました。(26歳というのも絶妙なチョイスですよね。これより若いと年上をBBA扱いして、これより年上でこの状況でのオタクだと悲壮感が増す。年齢のマウントを無視できるギリギリのラインかなあと思いました。実際はもうちょいシビアに年齢の呪いに縛られてそうだけど)
余談2
翔太君主演の「伝ステ」って実際の.5舞台だとどのへんの作品にあたるんでしょうね。6作品目、新作の予定あり、会場のキャパ800くらい。全9ステージ。超人気舞台というのも実はりさ子の妄想では?と思えてくるからこわい。(あっきー側の描写もあるから人気なのは確かだと思うんだけども)
それではみなさま良い推し事ライフを!
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*1:「ポエム」ってよく揶揄に使われる単語だけど、実はこの使い方は好きではない。だってみんな本当はポエム好きじゃん…?ポエマーじゃん…? そしてガチの詩人のスキルを考えると、ポエム笑とか言えないよなあと思います。谷川俊太郎とか最強じゃないですか…
*2:ちなみに伏せ字にしたところは、現場で問題行動を連発している?していた?ガチヤバ集団の名前が入ってました。まったく意味がわからない…本人なのだろうか?そして他界隈とは。それが脅しになると思ってる読解力と知能レベルがすごい。はからずもオタクのやばさが実証されてしまって、流石にこれには苦笑いしました
*3:「ファンサもらった事ないからわからないんじゃない?w」「僻みからの発言じゃない?w」という誤読勘違いマンが現れること必至なので、一応それは違うと書いておきます。オタクめんどくせえなあ…。毎回注釈入れるの、心底めんどくせえ。
*4:というのはこちらのサイトにある記述「オリジナル作品では「あなたとわたしが[We]に近づく物語」をテーマに、言葉で分かり合おうとしながらも分かり合えないことを受け入れ、それでも対話を諦めずに前を向く人間の生き方を一貫して描く。現実のような生々しい会話劇で、観客の日常につながるラストシーンを目指している。
2017年、「わたしの、領分」プロジェクトを立ち上げる。発達障害について、心理士の目を通して描いた代表作『わたしの、領分』を上演し続けるために活動中。」からも感じました
*5:すごいオタクはなんかもっとすごいらしい。知らんけど