晴れた日のねどこ

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三百年の子守唄再演 〜争いと人のぬくもりと〜

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みほとせ2019再演、東京公演が終わりました。
銀河劇場では数回観劇できたので、回ごちゃ混ぜで東京公演感想を。
ネタバレあります。
蜻蛉切、村正、青江についての話が厚めです。

 

 

 


全体の印象


初演から全体の余白を良い意味で詰め、タイトにテンポよくなっているように感じました。
やや冗長な部分はカットし、厚くする部分は厚く。
上演時間は初演と比べ、1部、2部ともに5分ずつ短くなってます。*1
これはちょっと意外。もっと圧縮した印象がありました。初演で無意識に感じていた中だるみ感がなくなったってことかなあ。


台詞やキャラクターの演技など細かい違いは色々ありますが、一番の変更点は出陣曲。
新曲でした。結構軽め明るめでアップテンポな印象。曲変更はそこだけ。
この曲でCD出すんだろうなあ。
てんてんてのひら来るか!?と思ったけどきませんでした。
(確かに、入れるにしてもどこに?って感じではあるけど…来ないか、そうかー!)




セットとそれを使った演出について


初演と同じく階段のみ。だけど木組み、左右に分かれるセットに変わっており、ちゃんと回収したお金が活かされてる!と感じました。
殺陣や演出に階段を使用するものがあって、そこも好きだなー。

具体的には敵と戦うときに階段を八の字にすり抜ける物吉くんは脇差の俊敏さが表れていたし、ちょいちょい階段下に隠れる村正がかわいかった。あれ、奥まったところにいてもちゃんと演技してるんですよ。かわいい。村正かわいい。
手合わせで脱ぐことを強要する村正に、床(階段の隙間)に隠れる物吉くんもかわいかった!
 
それぞれが一定の距離を保って話をするシーンでは、青江のセットの使い方がとても素敵。浅く腰かけて長い脚を投げ出したり、下手に向けて片脚を立てて座ったときに、白装束が段差の手前から垂れてたり。




人間の体温を感じて 〜石切丸と大倶利伽羅


ストーリーは同じ。
でも初演よりも人とのふれあいや絆をしっかり描くことで、相対的に争いの無情を浮かび上がらせる作りかなと感じました。

しかし竹千代君がかわいい。
ふくふくしてあどけない中村くんと、やんちゃでいたずらっぽい川尻くん。それぞれ魅力的…。


今回は身体的接触が増えてるんですよね。
竹千代君が石切丸に後ろから抱きついたり、蜻蛉切の左肩にぴょんと飛び乗ったり。
吾兵の手(泥だらけになってるー!!細かい!「土を耕した手」だ!)に触れた後、蜻蛉切の手に触れ「忠勝の手は大きいのう!」と笑ったり。
 

徳川の家臣として生き、彼ら人間と触れ合った描写を増やすことで、付喪神…感情を持たない「ヒトならざるもの」が心を持ってしまう課程、それにより生じる心の葛藤がよりわかりやすくなったんじゃないかなと思います。
 
いやー、あんなかわいい子が慕ってきて、にこにこしながらまとわりついてきてさーーー、でもその子を殺さないといけないなんてさーーー、無理じゃない!!??
ちょっと一人で背負いすぎなんじゃないかなあ!?!!??!
石切丸だいじょうぶ??(だいじょばない)




それと対になるのが大倶利伽羅ですよね。

石切丸は人間と近い場所で、願いや祈りを聞き入れてきたご神刀だから初めから人間に感情移入してる(し、人間との触れ合いでよりその感情を強くする)

倶利伽羅は戦いの中で振るわれた刀だから、戦いの中で人間の脆さ、儚さを理解する。剣術の稽古を通じ、人間の成長を十数年かけて見守ることで、大倶利伽羅はゆっくり人間への理解を深めていったんだろうなあ。
(これ、算術担当とかだったら吾兵の死にここまで感情移入してなさそう)

 


刀剣乱舞の大倶利伽羅のパート「俺は戦い抜く 刀として生き 死ぬまでだ」ってあるじゃないですか。刀として戦いの仕方を教え、刀として生きるはずが、図らずも人の心や感情を理解してしまったんだなあ。


わたしが観た回、吾兵の墓のシーンでの大倶利伽羅がものすごくやさしかったです。
声も表情も。
あんな顔をさせるのは吾兵だけなんだろうなあ。






それぞれの役の印象


初演と明らかに演技を変えてきたな…と思ったのは青江、村正、蜻蛉切でした。
特に村正のキャラクターが全然違うから、それぞれのキャラとの関係性が全く違ったものになってる。ここまで違うなら、もう別ルートが発生してもいいんじゃない!?と思いました。
(実際、青江が負傷して「僕を脱がせてどうする気だい」のセリフが出た時は、すわ別ルート発生か!?とドキドキしました。サウンドノベルじゃないのでそんなことはなかったぜ。)

 



石切丸
初演から安定して石切丸って感じ。ベースはそのままにブラッシュアップした印象。

にっかり青江
初演とは別個体なんじゃ…?と思った。後述。

物吉貞宗
より感情表現が豊かになって、初めから終わりまで徳川の守り刀を意識させられる。

倶利伽羅
すごく大倶利伽羅。財木くんとはまた違った良さがある。
とんでもない重圧だっただろう…と毎回思いながら観た。

千子村正
初演とキャラクターの解釈が全然違う。彼も別個体では?と思った。後述。

蜻蛉切
初演よりも情に厚く朴訥で熱い男って印象。彼も別個体と思った。後述。




にっかり青江の変化


青江、すごく人間の心に目覚めてませんか。
石切丸がナチュラルボーン人間の心わかるマンなら、青江は時間の経過によって心や感情を理解した感じ。

モノっぽさが顕著なのは初めの殺陣。
人間の姿形をしてるけど、これは刀なんだ、ヒトじゃないんだ…という印象。
わりと戦闘狂っぽくないですか?
そして赤ちゃんを抱いてるのに、それが守るべき存在だとは全く思ってない。
存在の脆さ弱さを意に介さず、モノみたいに扱ってる。


青江!それは赤ちゃんよ!!! 季節収穫物ではない!!!!!!!



赤ちゃん時代の子育ての最中もあんまりピンときてない感じですよね。
おでこがくっつくくらいじーーっと見つめてる。か、観察してる…!
 

でも家康が成長し意思疎通ができるようになってから様子が変わってきます。
嫌いなこと苦手なことをしてみるのも楽しい、自分が子育てをすることになるとは思わなかった、そう語る姿にはしっかりと人間に対する意識の変化や感情を感じます。

信康を斬りに行くと告げる石切丸を見送り、声を詰まらせる物吉くん。
彼に言葉をかけ、心について説いたのも青江でした。



他人に説明をするのって、難しい行為です。
「それ」がどういうものか理解して、自分の言葉で組み立てて相手に伝えないといけない。

「名プレーヤーは名監督にあらず」ってよく聞きますよね。
意識せずにできることって、説明が難しいんです。なんとなくできちゃうから仕組みがわからない。具体的にどういうものか言葉にするのが難しい。


青江の話に戻ります。
物吉くんに心について語るシーン、笑いなよと声をかけるシーン。
あれは「心が何かわからなかった青江が、数十年人として生き人と触れ合い」「一歩引いた位置から仲間の感情を観察し」「言葉で説明できるほど心や感情と向き合い続け」導き出して発した言葉なんだろうなと思いました。
 

青江…心の名監督かよ…今すぐコーチになってほしい…(何の?)



その集大成とも言えるのが、石切丸に笑いかけるラストのシーンです。
近すぎず、遠すぎない距離を保って、でも誰よりも心について考え続けた青江だからこそ、石切丸にああいう風に接することができたんだろうなと思います。

青江はきっと、みほとせメンバーのなかで一番冷静で、誰よりもやさしいと思う。


再演の荒木さんの演技を見て、そんなことを思いました。






蜻蛉切の変化


今回の蜻蛉切を見て、村正のこと好きなんだね、信頼してるんだね…って思いました。
村正の性格が初演とは違うせいもあります。
でも、それよりも端々ににじむ同派への信頼感が明らかに初演とは違う。


初演では突飛な言動で空気を乱すことで場を支配しようとする村正、それを嗜める蜻蛉切という印象がありました。こいつは困った奴だ、心配だというニュアンスが強い。
だけど今回、蜻蛉切は村正をフラットに見て、同等なものとして扱っているんじゃないかと思いました。
 

明らかに演出が変わったのは、信康を斬りに行くシーンですよね。

「俺も村正だ」

このセリフが全く違う。
初演では落ち着いたトーンだったのに、再演では力強い。

 


初演は、村正が一瞬泣きそうな顔をして「はい」と答えていたこともあり、蜻蛉切が村正の庇護者のような印象を受けました。
今回は「俺を忘れるんじゃない」と怒っているようにも見えました。


再演での関係性の変化は、村正が井伊直政として自己紹介する部分でも顕著です。
このシーン、再演だと蜻蛉切はおもしろそうに薄く笑うんですよね。
続く「どういう風の吹き回しだ?」のセリフにも、心配したそぶりもハラハラした様子も感じられない。同じ刀派の仲間、ファミリーの村正への信頼感が感じられます。
何このバディ感〜〜〜〜〜!!!すき!!!!!!!!



物吉くんが信康を斬りに行こうと駆け出す場面。
妖刀伝説を一人で背負おうとする村正に声をかけた蜻蛉切。そして何も言わずそれを受け入れる村正。そのやりとりは、同じ刀派の絆、そして蜻蛉切の村正派である自負を感じられるシーンでした。



初演では、心の内を見せず、おどけた振る舞いをするため誤解されやすい村正に手を焼き困る蜻蛉切
再演では、顕現されたばかりでどこか所在無げな村正のそのままの姿を受け入れ信頼し、一貫して対等な存在として振る舞う同胞としての蜻蛉切
そんな印象を受けました。






そして蜻蛉切個人の話をすると、戦い方!!!!!
見ました!?あの野蛮な戦い方!!!!!

頭突きをしたり、敵二体を串刺ししたり。串刺した状態で左右の敵を拳で殴りつけたり。頚椎だか背骨だかを素手で折ってましたよね?どんな豪腕だ。SUKI…


初演の千秋楽間近あたりのタイミング?で、時間遡行軍に馬乗りになってボコるという大変に野蛮なシーンが追加されたのですが、わたしはそれが大好きなんですよ。
なので、今回の野蛮きわまりない蜻蛉切にときめきが止まりませんでした。
 
品行方正で落ち着いた武人(赤ちゃんの家康にかしこまってお辞儀したりする…)なのに、戦いでは素手で敵をボコボコにするとか…ギャップ…!

 


あと、蜻蛉切って遡行軍だけじゃなく、人間相手でも割と容赦無く叩き斬ってるんですよね。そういうところも好きです。ぶ、ぶ、武器〜〜〜!!!
さすが村正派。



喋る時の発声の仕方は、らぶフェスとも初演とも違ってたので初日はまだ迷ってるのかな…と少し思いました。もしかして初演と別個体って意味で変えたりしてたのかな…知らんけど。


歌はまた上手くなってて、一体どこまで上手くなるの…?歌声の大盤振る舞い、バーゲンセールか…?と震えました。ジャージー・ボーイズのニック・マッシ役から得るものが多かったのかなあ…と勝手に感じました。(またニックも見たいなあ…)


二部の村正とのデュエットで、向き合いながら噛みつくように歌う姿も好きですが、一番テンションが上がるのは第三形態の曲!!!!!
高音をぶっ放すところで毎回悶絶します。好き。これ絶対らぶフェスでやったらフェイクもりもり入れそう。というか、村正とのデュエットも銀河後半では微妙に溜めを作って歌ったりしてるんですよね。
はーーーーーー、やめて………すきです…。


第三形態の曲、金色の布を肩にかけてるのを見るたびに「プロレスラーか!!!!」と思いながら見てます。むちむち。
らぶフェスのビーストモードみたいなテンションの時もあるし、「わーいたーのしー!」って感じで中の人がはみ出てる時もあるし、どっちも好きです。


spiさんは後半になるにつれ乗っていく印象があるので、別会場での演技も楽しみです。






村正の変化


村正、初演からガラッと変えてきましたね。
再演をはじめて観た時は、初日だからか抑えてるのか?と思いましたが、もうこれは別個体なんじゃ?と思うようになりました。


初演の村正は、もっくん本人が言うようにコミュ障だなと思いました。
他者との接し方がわからず、わざとテンションを上げたりおどけることで、場のイニシアチブを取ろうとする感じ。(だからこそ、その空気に流されない青江との会話シーンでの対比が際立ってました)
倶利伽羅に構おうとするのも、彼が決して自分になびかないのを知っているから安心して絡んで行ってたんだと思います。
心を許しているのは蜻蛉切だけ。表面上はフレンドリーに振舞っていても、決して心の内側に他者を入れない。そんな印象がありました。


でも、今回の村正はそのフレンドリーさもほぼありません。おどけて他者との間にバリアを張ることすらしない。
繊細で傷つきやすく、厭世的。刀剣男士として顕現したこと、妖刀と疎まれることに戸惑いを感じているように見えました。


初演では、なびかない大倶利伽羅に安心してちょっかいを出している(ように見えた)村正ですが、今回はちょっと意味合いが違うんじゃないかな…と思いました。
序盤で上手側の柱にもたれかかる大倶利伽羅に「ねえ?」というように軽くからむシーンがあります。これ、他人との接触をあえて避けてる彼に親しみのようなものを感じ、アクションを起こしてるんじゃないかな…と今回は思いました。


青江との二人での会話シーンも雰囲気が違う。

必要以上に動揺したりしないし、おどけたりもしない。
悲しさだったり割り切れなさを抱えて話をしているように見えました。
(荒木さんの「なんだろうねえ」が毎回違うので、コミカルに見える日もあったけど…笑)

 
 
 
村正、演技がすごく細やかなので観ていて楽しいです。
青江と大倶利伽羅が消息を絶ったシーン、初演でニタァ…と笑ってるところも大好きですが、今回のちょっと抑えめ(に見える)ところも好きです。
腕を組んで、右手の指先を細かく動かしたり。
 
引いたポジションで場を観察する、ツンとした猫ちゃんみたいだなあと思いながら観てます。
村正は青江と同じく観察者ではあるけれど、出自のせいで物の見方が皮肉っぽいなあという印象があります。青江がフラットに人間の感情を観察しているとしたら、村正はなにこれ…?と戸惑ったり、少しバカにしたようなそぶりをする。
人間相手だけじゃなくて、刀剣男士相手にもその傾向がありますよね。「徳川の家来に成り代わる?おもしろいことを言いますね」みたいにくつくつと笑っていたり。
 
 
 
初めは人間の心や感情を理解できず怪訝な顔をしていた村正が、徳川の人間と接し、刀剣男士と接し、徐々に心を学び変化していく様子が鮮やかに演技に組み込まれているなあと思いました。心を開く過程で、仲間にも徐々におどけた様子を見せていくんですよね、今回は。
蜻蛉切のぽんぽんにちょっかいを出したり、手合わせで物吉くんを脱がせようとしたり、大倶利伽羅の目を回そうとしたり。(あのシーン、物吉くんが上手側で自分で自分の目をくるくるしてるのがかわいい。あと、初めは怪訝な顔だけど並んでるうちにニコニコ顔になるところもかわいい)
 
 
 
その他のシーンとしては、井伊直政として紹介された後、家康退場を見送ってからぐったりしてるところが好きです。肩で息をして階段に寄りかかったり、肩をバキバキ回したり。かわいらしい…
 
 
 
 
 

まとめ(まとまらない)

二部も書こうかと思ったけど長いのでひとまずこれで。
 
ストーリーに変更はないので、今回は演技や演出の違いを楽しむ感じになるかなあと個人的に思いました。あとは千秋楽に向けて変化していく雰囲気。
初日はまだあんまり遊びがない感じでしたが、回を重ねるごとに徐々にこなれてきた感じでした。今後どう変わるのかな。
 
とりあえず遠征してきます。違う会場で観るのも楽しみ!
 
 



3/25追記
みほとせ 終わっちゃった…大阪、京都、TDCでも観たのでまた感想書きます。
 
 
 
 
 
 
 
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*1:初演は1部2時間15分、休憩15分、2部40分→再演は1部2時間10分、休憩20分、2部35分