晴れた日のねどこ

答えの出ないことばかり考えている

舞台サマエルのふわっとした感想

推し主演の舞台が終わって10日ほど経ちました。

期間中は毎日舞台世界のことを考えて頭がパンパンだったはずなのに、

日が経つごとに少しずつ記憶も感情も薄れていきますね。諸行無常〜!

 

先日1万字かけて主人公のオキソへの思いをブログに書いたのですが、

その怒りも少しずつ薄れてきました。

 

今日は物語前半について、備忘録代わりに書き記しておきます。

上演が終了していること、この舞台のポイントはおそらく後半であること、

前半のストーリーはほぼ前情報で出ているものなので、

ネタバレとその時の印象をあわせて書きます。

 

サマエルを観てない人はなんのことだか…という感じだと思うので、鑑賞前に作った相関図も一応おいておく。

 

 

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そして予習記事はこちら

 

 

 

 

 

1.《メサイア》の誕生

冴えない研究者のオキソとローレンシウムは、世の中の爪弾き者だった。
しかし長年の研究の成果が実り、ようやく新たな物質を誕生させることに成功する。
世界に存在しなかった未知の成分、自分たちには思いもよらないような利用方法もあるに違いないその物質に、オキソは《メサイア》と名付ける。


「なあローレンシウム。俺たちは、未来永劫、世界の全てを手に入れられるかもしれない」


あらゆる可能性を秘めたメサイアで、世界に革命が起こせるかもしれない…。未来への希望を持ちつつも、それを狙う人間が現れることを危惧するオキソ。
彼は秘密組織《サマエル》を組織し世界の有力者を味方につけ、メサイアを守りつつ「世界の全て」を手に入れようとする…。



9人の白衣を着たダンサーに囲まれフラスコを掲げ持つオキソ。ローレンシウムを呼んでメサイア誕生を喜ぶシーンがめちゃくちゃかわいい。
なんせふたりとも髪の毛がはねてくしゃくしゃだし、喜びのあまりおなかからスライディングしたり(回によっては勢い余って滑りすぎ、段差に頭を強打していたらしい。かわいい…)、お揃いのダサいカラーリングのクロックスが脱げるほど興奮したり、なぜか突然見えないライトセーバーを振り回して「ブゥン……」「ブシュゥゥウウン…」とか言い出す…かわいい…大の!大人なのに!!!

オキソ役のspiさんは30歳、ローレンシウム役の林田さんは29歳。そんな二人の全力の喜び…。しかも186cmと180cmだ。でっかいふたりがこどもみたいにきゃっきゃしてる…かわいい…!!!

肌を上気させながらメサイアの可能性について熱弁を振るうspiさんが印象的でした。
(感情を顕にするシーンになるといつも肌が赤みを帯びていて、おお…と思う。血行が良さそうですね)
椅子の上にフラスコを置いて二人で話しているシーンは、中につばが入りそうだね〜、うんうん、うれしいもんねえー、よかったねえー、と思いながら見てた。ほのぼの…。でもつばが入ってメサイアは変質したりはしないのだろうか、やっぱりきになる。
あとオキソの服がとてもダサい。あれはたぶんありものじゃなくて衣装作ったんだろうなあ。





2.サマエルへの勧誘

おそらく舞台は数年後。
砂と石に囲まれた不毛な土地で生まれたアルキンは、農業を支援するグループ《大地の労働者》を立ち上げ、世界の農業のあり方を変えていた。その変革に使った物質メサイアは、今やローレンシウム率いるユグドラシル社での大量生産、流通に成功している。
ローレンシウムの妻でありユグドラシル社の成功に大きく貢献しているクロムは、アルキン、そして《大地の労働者》をモチーフに物語を執筆しているトリアゾールを秘密組織サマエルへと誘う。



クロム演じる小川夏果さんの鈴を転がすような声がすてき。アルキンの巽さんは遠くまでよく通りそうなキュッとしまった声、トリアゾールの山元さんは浮ついたところがない落ち着いた声。
風格が漂うトリアゾール、不安もありつつしっかりとユグドラシルを支えるクロム、前のめり気味に溌剌と仕事をするアルキンのキャラクターがくっきりしてるシーンだなーと思った。アルキンとトリアゾールのパワーバランスもわかりやすかった。なんかこの二人ニコイチなかんじ。


ちょっと衣装の話。
トリアゾールさんが出てきた時びっくりした。着物か!!!って。大体着物の着崩しやアレンジってセンスがないと大事故になる(のであまり好きではない)んだけど、トリアゾールさんの衣装凄く良かったー!バランスがいい。
茶色ベースにところどころに大きな円の模様、青緑の半襟をたくさん見せて、かなり短く着付けた足元は茶色のショートブーツ。髪型がショートカットなのもあって、全身のバランスが凄く良かった。着替えるシーンもあるのにすごいなー、着物二部式にしてたのかな。前半の衣装では全キャラクター中これが一番好きでした。






3.世界の強者たち


オキソに頼まれユグドラシル社の社長として事業を成長させてきたローレンシウム。そして秘密組織サマエルを結成し、世界の強者たちを仲間にしてきたオキソ。
彼らの今日の最初の会談相手は、世界的映画監督ガンマ、有名女優ウラン。そしてサマエル関連の事業を中心に、今回の映画にも出資をしている若き資本家カルボン。
オキソはガンマ監督に、サマエルをモチーフとした映画を撮影するよう依頼。撮影は順調、主役のウランの出来も今までで一番と監督が言うほど上々らしい。
二人が去った後サマエルの目的を問うカルボンに、オキソは如才なく「我々の目的は幸福の最大化、メサイアで世界をよくすることだ」と答える。

カルボンが去った後、次の来客に緊張を隠せないローレンシウム
こわばった表情のローレンシウムとは対照的に、落ち着いた笑みを浮かべるオキソ。

 

「遅かれ早かれ通る道だ」




このシーン、初見でびっくりした。
あのダサい服とクロックスを着た髪の毛くしゃくしゃの二人が!見えないライトセーバーを振り回していた二人が!スーツを着て大人みたいな顔をして振舞ってる。
特にspiさん演じるオキソはそれが顕著で、ワインレッドのシャツにグレーのジャケットを着て、髪の毛はきちんとセットされてる。ゆったりと椅子に腰掛け満足げに目を閉じ、余裕有り気に振舞っている。
メサイア誕生の瞬間とは真逆の、生まれた時から落ち着いていたみたいな風格のある姿。冒頭のシーンとのギャップに、何が起きたかわからなかった。(この辺りの心境の変化の考察については、また書く)

くしゃくしゃすぴの後にかっちりすぴですか…脚本の一ノ瀬さんはオタクの心を鷲掴みにして握り潰す気なのかな!?と思った。あぶないあぶない。


ティーザーの段階ではツンと済ました女優と一癖ある監督かな?と思っていたけれど、ウランちゃんもガンマ監督も全然思ってたのと雰囲気が違うー!
ちょっと舌ったらずというかくぐもった声のぼんやりめの監督と、感情表現が豊かでキュートなウランちゃん。ピュアで好奇心旺盛でかわいい。
そしてメサイアが完成した時に恐怖はなかったのか」という問いは、結構重要なセリフなんじゃないかなあと思う。

カルボンは若き有名投資家として雑誌とかでインタビューに答えてそうないでたちだったなー。ヨットとか乗ってそう。なんでああいう感じの人って足首出すんでしょうね???

「遅かれ早かれ通る道だ」
のところの、指をとことこさせるspiさん、これ途中からの演出かな。上演初期らへんのではやってなかった気がする(席の関係で見えなかったのかも)
そしてこのセリフも重要なやつだなと思う、かなり。





4.メサイアの有用性


秘密組織サマエルからメサイアの安全性検査を一任されている医師・セシウム
彼女は農場を視察し、農作業に従事するアルキンに最近の様子や労働に関して尋ねる。
仲間は未来の農業を担う存在だ、自分の誇りだと言い真摯に農業に取り組むアルキンの姿勢に、「何かあればすぐにしらせてくださいね」とセシウムは伝える。


ちょっと空回りしてるというか、真っ直ぐで前のめりなアルキンと、冷静だと見せかけてオキソについて語るときはテンションが振り切れるセシウム(それを目の当たりにして引くアルキン)の二人のシーン、コミカルで好き。
そしてここのアルキンの衣装、通常時から微妙にアレンジしてるんだよね。ベージュのパンツをブーツインして、ストールの代わりにタオルみたいなのを首から下げてる。こういうちょっとした工夫好きー。
千秋楽ではセシウムのアドリブの鼻歌にアルキンが乗ってたのが可愛かった!!!!


ここでおや、と思ったのが、メサイアは大地の労働者の工場(このエリアに複数ある)でも大量生産しているんだなーということ。技術の漏洩とかなかったのかな…。





5.重要な会談


ガンマ監督、女優ウラン、投資家カルボンが離席し、新たに招き入れられたのは国家化学戦部局責任者のコバルト、連邦秘密警察の情報管理部責任者・クロリド、若き政治家であり党首でもあるフェノール、世界の食品の大半を製造する大企業のトップ・ベンゼン
用件を済ませたベンゼン、フェノールの二人を退席させた後、緊張した面持ちでコバルトが口にしたのは、メサイアの軍事利用についての取引だった。



ベンゼン社長好きなんですよー。この登場シーン、結婚指輪を触りながらしゃべってるんだよね。そして関係ないですが、後ろから見た髪の毛のフォルムが四角っぽくてねこちゃんみたい。かわいい。メサイアに手を加えた物質の、食品への利用の独占権契約を500億で成立させた後、オキソとは握手をするんだけど、ローレンシウムとはしない。わかりやすい男だ…!
しかし差し出した手を無視されても、「契約成立したぞ!」みたいにガッツポーズを決めてあまり気にしていなさそうなローレンシウムの良い人さ加減!!好きだよローレンシウム

フェノールは胡散臭さ満点です。なんなんだその長い前髪は!前から見たら整ってるのに、後ろ髪は割と適当だし、服は柄がうるさいし、なんなら靴下は赤と緑のしましまだ!セ、セ、センスー!!??!?
赤と緑って補色だよね。靴は白で、かかと部分が黒だったか。衣装でも理想と本心の差、裏表を表現したりしてるのかなあ。


こういう腹に一物あるような人たちと対等に渡り合うようになったオキソの心境の変化を考えると、あああ…という気持ちになる。

 

 


クロリドさんかっこ良くて好き!始めてみたとき、なんて美しい後頭部のラインなんだ…と思った。キリリとしてて冗談を言わなさそうなキャラクターなのに、御本人のTwitterでは楽しさ全開でふふっとなりました。
エポーレットに通したグレーの布が衣装のポイントだなーと感じたけど、あれ実戦だと邪魔じゃない?大丈夫?それともマント的なひらひらした感じで敵を撹乱するのか!?

 

 

 

あまりの後頭部の美しさに絵を描いたらご本人からリプライをいただきました。わーい!サマエル関係者、タグが付いてなくてもガンガンパブサをしてきて、そういう方針だったのだろうけどギャー!ってなった)

 

 

 

 


コバルトのみずきくんは、油断なく周囲に目を光らせてる感じが素敵だったなー。しかし若いながらも重要なポストに就き、その双肩に責任を担う苦悩みたいなものも垣間見えた。そして衣装、かっちりしてて決まってますね…。制服ってこう…かっこよくていいですよね…。


キャラクターの心理描写や詳しい考察は別のエントリに詳しくまとめようかと思ってるんだけど、ここでもローレンシウムの良い人さにウンウン…と思った。


彼ははじめからメサイアを世界を救うために使いたかった人で、本当は軍事利用したくなかったんだろう。ユグドラシルの成長とオキソの考え、自分の立場、国の置かれた状況を考えて、結局は軍事利用に首を縦に振ったけれど。
それに対してオキソは、はじめからかどうかはわからないけれど、ある程度の時点から軍事利用も視野に入れていた。
「遅かれ早かれ通る道だ」って発言からもそれは明らかだと思う。
彼ははじめから、革命を起こしたかったんだろう。





6.不穏な影


大地の労働者の工場近くの河川から、魚の大量の死体が発見される。
ニーズヘッグ社の食品を食べた家族が原因不明の重病に侵される。
農場で働くアルキンの仲間たちは次々と倒れ、医師にもう長くないと告げられる。

ユグドラシル社の物質・メサイアが原因なのではという報道に混乱するサマエルのメンバーたち。
メサイア再調査を行ったセシウムは、結果をオキソへと提出する。調査の結果は、長期に渡りメサイアの摂取を続けた場合に限り、強い毒性が発生するというものだった。
当局へ提出が必要だという書類を改ざんしようと言い出すオキソ。
今重要なのはメサイアの安全性に問題がないということをわからせることだ、生産を中止すればメサイアが毒だと知らしめることになると言うオキソに、気でも違ってしまったのかと問いかけるローレンシウム
オキソは調査書を机に叩きつけ、「どうかしているのはお前の方だ」ローレンシウムを激しく叱責する。

入れ違いに入ってきたクロリドとコバルトに「事態は最悪でしょうか」と問われ、オキソは淡々とメサイアに毒性が発見されたこと、このままでは軍事利用が難しいことを伝える。
戦場に毒をばら撒くおつもりですか? しかし私ならメサイアを戦場で利用できるよう手を加えることができる、そのためにあなた方に頼みがある、これから話す作戦を確実に成功させてほしいと強い口調でオキソは二人に取引を持ちかける…。




ピンチって人間性が浮き彫りになる。
ここはそれぞれの人間性の底の部分が垣間見えたシーンかと思う。

魚の死体発見のニュースにローレンシウムはひどく狼狽し、セシウムは初めて自分が安全性の責任を取らねばならない立場だと自覚し戸惑う。
自社の食品が原因で病人が出たことを、メサイアが原因だと激しく罵るベンゼン。誠実に対応をしようとするが、あまりの剣幕に思わず受話器をおいてしまうクロム。
自分の誇りであり同士の農場の仲間が倒れたことにアルキンは泣き崩れ、フェノールは驚きながらもアルキンを宥める。
自分はメサイアに深く関わりすぎたのかと僅かに後悔をにじませるカルボン。
張り詰めた面持ちのコバルトと、メサイアの軍事利用が難しいと知らされ激昂するクロリド。



顔をくしゃくしゃにしてその場に崩折れるローレンシウムを叱咤するクロムがすごく好き…。ほんとしっかりした素敵な人だなクロムは…ローレンシウムはいい人を見つけたな…。

そして、ここのオキソ。
spiさんの体格がとても良いので、すごい剣幕で怒鳴るところが怖い怖い。
ただでさえ危機的な状況なに、こんな大男が調査書を改ざんするとか言い出して、なおかつ怒鳴り始めたら泣いてしまいそう。
そして、何が起きるかわからないから身体を休めておくようにセシウムに言うところに若干苛立ちが募るよね…お、お、おまえーーー!!良い人ぶりやがって!!!




7.刺激的すぎる渦の中へ


コルドコルド地区の魚の大量死体、ニーズヘッグ社食品を食べた家族の病状、そして大地の労働者メンバーの死亡。これら一連の事件がユグドラシル社のメサイアが原因であり、計画的大量殺人なのではないか。それに関わる秘密組織サマエルのメンバー13人に事情聴取を行うとニュースが告げる。

一足先に投獄をされた映画監督のガンマ、女優のウラン、そして政治家のフェノール。
どんなにいろんな役を演じても、それは別人の人生でしかない。だけどオキソは自分を刺激的な渦の中に導いてくれそうだと場違いに微笑むウラン。これは刺激的すぎるだろう!と大声を上げるガンマ。
理想の世の中のために立ち上がれと朗々たる演説を始めるフェノールは、途中で膝から崩折れ、オキソに嵌められたと咆哮する。




このシーンのフェノール好き…。
長ゼリフをペラペラ話す人を見ると、あっ、好き…!!と思う。なんでだろ、口に出して言うことって、何度も頭の中で反芻したり、抽出しないと取り出せないと思ってるからかもしれない。フェノールはでまかせを軽々と言えそうだけども。


繰り返し繰り返し話してきた美辞麗句、そしてそれを二度と人前で話すことができなくなったであろうこと、うまく利用していたつもりのものに裏切られたと感じたこと、その感情がごちゃまぜになったようなシーンだと感じた。


 

 

 




前半だけで6000文字を超えてしまった…。
後半は会話劇なのであらすじを書くつもりはないけど、オキソに対する解釈は少し変わったし、他のキャラクターについても書き足りないところがあるのでまた書きたいなー。
 




ところでこういうマシュマロを頂いてたのですが、
好きなところがあるからこそ!オキソめちゃくちゃむかつくんですよ!!!くやしい!!!!

 


 

 

誰かが生み出したキャラクターに、こんなに腹がたつってすごいなあと思いました。

前作ゴリアテ主演の山口大地くんの役に怒っている人を見かけたし、一ノ瀬さんはこういうもやもやを書くのが上手な人なのだろうか…手の上で転がされている…


 



前回オキソにブチ切れたブログはこちら

 

 

…を、クロム役の小川夏果さんが引用RTしてくださいました。

うれしいけどこんなのをRTしていいのか…?とざわざわした。

 

 

 

一万字かけてオキソへの怒りを綴った後に何回か観劇した結果、彼への理解は深まったかもしれないけど、もやもやは増した。
オキソ、好きになれない…!
正確に言うと魅力的なので、なおさら身勝手でクズなところがむかつくというか…。

 

こんなにいびつなのに、ある意味まぶしいくらいにまっすぐで魅力的な役を推しが演じてくれたことに感謝するしかない…。

 

 

 

 

 

 

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