晴れた日のねどこ

答えの出ないことばかり考えている

灯りをつなぐように



 

命は、大切だ。
命を、大切に。
そんなこと、何千何万回言われるより、
あなたが大切だ。
誰かが、そう言ってくれたら、それだけで、生きていける。

 


昔やっていたCMだ。

顔の見えない「誰か」に向けての言葉じゃなく、
ただひとりの「あなた」に向けての言葉は、
いつだって、まっすぐに胸に響く。

 

 

表裏があり、言動に食い違いがある人が理解できなかった。
信じられなかったし、信じたくもなかった。

嘘をつき、迎合し、
自分をごまかしてまで他人とつながりたくはなかった。
それは相手を軽んじて、馬鹿にすることにほかならないからだ。

できるのは、誠実であろうとすることだけだった。
傷つくことすら選べない臆病者にはなりたくなかった。


嘘をつかず、ごまかさずに他人と向き合うのは裸で往来を歩くようで、
嗤われたりじろじろと見られたりした。
気味悪がられたり、石をぶつけて喜ばれた。

そのたびに、心はぐしゃぐしゃになった。

 

 

 

「まっすぐすぎる」

何人もの人間から言われたその言葉の真意は様々だった。
見慣れないものへのとまどい。
嗜虐性が垣間見える好意。
そのやり方で傷つきはしないかという心配。
そして、わたしのやり方に傷ついた人の、ふるえるような呻き。


結局のところ、わたしも同じように、
きっと何度も他人を傷つけている。
だけど違うやりかたなんて思い浮かばなかった。
ただただ、心の底から誰かとつながることを諦めたくなかった。

 

 

痛くても良かった。
嘘をつきたくなかった。
みんながやっているように、わたしも誰かと笑ったり、
他人と一緒にいたかった。

そばにいてほしかった。

 

 

 

あの日、客席に降りて、
自分も含めた全員を同じひとりの人間として扱おうとした
彼の姿を思い出す。
おそれずに弱さを晒し語りかける姿は、
暗闇を照らす光のようだった。

 

 

傷ついた記憶も傷つけた事実も、
なかったことにはできない。
けれど、
「誰か」じゃない、いるかどうかさえわからない、
ただひとりの「あなた」を求めた夜の底で、
他人とつながることを諦めたくなくて
吐き出すように泣いたいつかの自分に、
そっと寄り添ってもらえたように感じたのだ。

おかしな話だと嗤われてもいい。

 


時間を超えて、いつかの祈りは通じたのだ。

 

 

 

だからあの日の彼の姿を、
わたしはきっと何度も思い出す。

これから先のわたしの祈り
あの日手渡された灯りをつなぎ、
「あなた」を照らし、手を引くことだ。

 

 


もうここは、ひとりきりでふるえた夜の底じゃないから。

 

 

 

 

 

 

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